走行中前の方からゴー音がする 原因と修理 ハブベアリング交換方法
走行中に前の方から「ゴー」という異音がするという内容の点検、修理内容と費用などについてまとめた記事です。
「ゴー」という異音は場合によって、「ウォー」「ウォンウォン」などのように聞こえるかもしれません。
走行中前の方からのこのような異音がする場合、タイヤに原因がある、ハブベアリングに原因がある,ミッションに原因がある、エンジン補器類に原因がある場合などが考えられます。
今回の場合は『フロントハブベアリング』という部品の不具合が原因で異音が出ていましたので、そちらの点検、修理内容になります。
~車両情報~
・車両:トヨタ プロボックス
・走行距離:12万km台
・主に商用車として使用しており年間走行距離も多めです。荷台には常に何かしらの荷物を載せているような状態です。
フロントハブベアリングの交換にはボールジョイントの結合を解除する必要があります。
そちらの作業方法は別記事の「ボールジョイントブーツとは?交換作業と費用について」に詳しくまとめていますので参考にしてください。
また、『リヤハブベアリングの異音』について、交換方法や費用など別の記事でまとめていますので、走行中の異音についてはそちらの記事も合わせて参考にしてみてください。
ハブベアリングという部品はフロントとリヤで若干構造が異なります。
このページの目次
点検内容
先ずは車の試乗を行います。
車のスピード、タイヤの回転速度に応じたゴーという異音が車内に響き渡るのがわかりました。
50~60km付近で大きく聞こえやすいようでした。耳で聞いている感じだと左のフロントの方から音が鳴っているようです。
試乗したところ左フロントのハブベアリングに異常があると思われるので、ハブベアリングの点検を行います。
車両をリフトで上げて、フロントのタイヤを空転できる状態にします。エンジンをかけシフトをドライブに入れてタイヤを空転させます。そのまま一番音が大きく聞こえた50kmくらいまで速度を上げます。
すると先ほど同じようなゴーという音が車内に響き渡ります。
この時点でフロントのハブベアリングと判断してもいいのですが、まれにミッションからなっている場合もあるので注意が必要です。
またタイヤを浮かせて駆動させることでタイヤに原因があるかないかの切り分けが出来ます。
空転させたとき音がしなくなるならば、タイヤに原因があるという切り分けが出来ます。
協力者がいる場合は一人が車に乗って速度を上げてもらい、もう一人が外から音の確認をします。ほとんどの場合これで左右異常があるハブベアリングはタイヤの回転周期と同期してゴーという音が鳴っているのがわかると思います。
片方が正常ならば聞き比べてなおさらわかりやすいですね。
また整備士が異音などを点検するときにはサウンドスコープという聴診器ののような工具を使って点検したりもします。
動画でハブベアリングの異音を確認
動画のベアリングはリアからの異音ですが、音の聞き分けの参考になるかと思います。
回転するとゴロゴロ音がしているのがわかるでしょうか?
この音もハブベアリングのガタからきている異音になります。
車内からハブベアリングの異音を撮った動画です。「ウォーン」という異音がします。
ちょっとわかりずらいかもしれませんが、40km~50km時が異音のピークです。
ハブベアリングとは
ハブべアリング 修理内容
今回は左のハブベアリングとハブも一緒に交換します。
ハブは再使用できる部品ですが、ちょっと後々めんどくさいので一緒に交換しちゃいます。
先ずはナックルを車両から取り外します。ハブベアリングはこのナックルという部品に『圧入』という方法で組み込まれています。
したがって今回の修理にはプレス機という機械が必要になります。
ハブベアリング 取り外し
画像はとりはずしたナックルASSYです。
車についている状態だと、タイロッドエンド、ディスクロータ、ブレーキキャリパ、スピードセンサなどが付いていますがすべて取り外て画像のような状態にします。バッキングプレートだけついた状態です。
またタイロッドエンドや、ロアアームジョイントを切り離すのにはボールジョイントセパレーターという工具が必要です。
こんな感じの工具です。
ナックルの裏側のスナップリングを外します。
画像のCの形をした物がスナップリングです。この部品はベアリングを後ろから抑えています。
くぼみがあるのでそこにニードルプライヤーなどを入れて縮めながら外します。結構硬いので力がいります。
このスナップリングは再使用します。
ちょっと見ずらいかも知れないですが、(かなり見ずらい汗)
外側赤丸部がハブベアリングアウターレース。
真ん中青丸部がハブベアリングインナーレース。
内側緑丸部がハブ
になります。
スナップリングが外れたら、ナックルからハブを取り外します。ここからはプレス機を使った作業になります。
画像の様にハブの系に合ったソケットなどを使って取り外します。
ポイントはハブの径より一回り小さいソケットを用意することですね。
この状態でプレス機に圧をかけていくとグイグイ押されて、ハブがベアリングから抜けてきます。ハブを再使用する際は下に落とさないようにしっかりとキャッチしてください。
~ハブの再使用について~
ここでハブの再使用についてですが、通常ハブを取り外した際は画像の様にベアリングが分解してインナーレースがハブの軸に残ってしまいます。
これを外せばハブを再使用することが出来るのですが、外すのが結構めんどくさいです。やり方としてはベアリングとハブの隙間にたがねなどを打ち込んで隙間を大きくし、ギロチンプーラーなどを使ったり、プレス機で外します。
もちろん再使用した方が費用は削減できます。費用を最小限にしたい場合は再使用で。
左がハブ。右がアウターレースとボール。ハブをはずすとベアリングはこんな感じで分解してしまいます。
ハブとインナーレースの外し方は別記事で詳しくまとめていますので、ハブを再使用した方は参考にして下さい。
最安で仕上げる場合は、時間はかかりますがハブの再使用をした方が良いです。
ハブが外れたらバッキングプレートを外します。
そのあとは表側からベアリングをナックルから取り外します。
ナックルの下側には筒状のものを用意します。ちょうどいい大きさのものがあるとやりやすいですが、ない場合は高さなどを調整しながらナックルが水平になるように調整してください。
この状態でプレスで圧をかけていくとベアリングが外れていきます。
ここが一番力のかかるポイントになりますね。しっかりと垂直に力がかからないと抜けてきませんし、ナックルの破損の原因にもなります。
ハブベアリング 組み付け
ナックルからベアリングが外れたら新品のベアリングを入れていきます。新しい車種などはベアリングに外側内側の向きがあるものがありますので注意してください。
さっきとは逆の手順で圧入していきます。
必ずベアリングのアウターレースに当て物をして圧入を行います。ほかのところに力をかけてしまうとベアリングの破損原因になります。
また垂直に圧入することがとても大切です。曲がって入れてしまうと異音の原因となります。
最後まで入ったら圧力が150kgくらいまでゲージが上がるの確認してプレスの圧を抜きます。
ベアリングがナックルに圧入されたらハブを圧入する前に必ずバッキングプレートを取り付けます。ハブを付けた後はバッキングプレートを付けることが出来なくなるので注意してください。
ハブを圧入します。
このとき下側からベアリングのインナーレースに当て物をしています。抜くときに使ったソケットでいいと思います。当て物をしないと、圧入していく際インナーレースが飛び出してきてしまうので必ず行ってください。
最後まで入ったら、ここでもゲージが150kgになるまで圧をかけてプレス機の圧を抜きます。
圧入が完了したら、手でハブが抵抗なく回転することを確認してください。最後にスナップリングを戻します。
以上でベアリングの交換作業は終了になります。あとはナックルを足回りに復元していきます。
ハブベアリング交換 修理費用 まとめ
ここまで読んでいただくとわかると思いますが、結構大変な作業です。
紹介したのはベアリングの部分だけですが、実際は足回りをばらすところから始まっています。足回りをばらしていく工程も結構大変です。さらにプレス機などの機械も必要になります。
なので工賃も高額になる場合がほとんどで、20000円~25000円くらいかかると思います。
部品代として、ベアリングは約7000円くらい。ハブは約6000円になります。ハブは再使用もできますのでその場合はハブ代が浮く金額になります。
ハブベアリングの交換は結構高額な修理になる場合が多いですね。片方が駄目になってしまった場合、もう片方も駄目になる可能性は高いのでその場合単純に倍の費用が掛かってしまいます。
またハブベアリングに異音がありガタなどが発生していると、車検は通らないので交換修理が必要になる箇所です。
最悪の場合ベアリングが分解して走行不能状態になる可能性もあるので(実際にベアリングが分解した車両をみたことがあります)、異音が発生した場合は早めの交換をした方がよいと思います。
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