エンジン圧縮不良による始動不良 点検内容など




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圧縮不良によるエンジンの始動不良の点検内容です。

今回点検したエンジンは1AZエンジンです。1AZエンジンの始動不良といえば、スタータやフューエルポンプが定番ですが、今回の不良は圧縮不良(全気筒圧縮なし)によるものでしたのでその内容を紹介していきます。

・車両は60ヴォクシーになります。

・走行距離は15万kmのものになります。

またコンプレッションゲージの使い方などについても簡単に説明しています。

エンジン始動不良の症状

エンジン始動不良までに至った経緯は、まずアイドリング中エンジンルームの方からガラガラという音がなりエンスト、そのまま再始動するもガキンという大きな音とともにエンスト、その後再始動不可状態になってしまったということでした。

運ばれてきた車の症状を確認すると、クランキングはしているが、クランキング音が明らかにおかしい。

通常クランキング音は吸気、圧縮、燃焼、排気という工程を繰り返しそれぞれの工程で負荷が違うため音が変化します。

正常であればキュンキュンキュンと脈動をうつ感じで速度が変化しながらクランキングします。

今回の車両はクランキングをすると、キュルルルルと一定の速度のクランキング音でした。

動画を撮影したのでご覧ください。

 

クランキングの音の感じから圧縮不良が起きていると推定し、コンプレッション(圧縮)点検を行います。

圧縮漏れが起きる個所と原因

圧縮の点検をする前に圧縮俺の起きる個所を知っておくことが重要です。

エンジンで圧縮もれが起きた場合

・シリンダーとピストンの不良。

・動機弁系。バルブタイミング、バルブのデポジット噛み込み不良など。

・ヘッドガスケットの抜け。

以上のような箇所からの圧縮漏れが考えられます。

この様な不具合が起きる原因としては様々な要因が考えられます。シリンダーやピストンの摩耗、ピストンリングの折損、タイミングベルト(チェーン)のコマ飛び、エンジンのオーバーヒートなどが主な原因として挙げられます。

主にエンジンオイルの交換をしていなかったりすることが深くかかわる場合が多いかと思います。

エンジンのコンプレッション(圧縮)点検

エンジンの圧縮を点検するにはコンプレッションゲージという工具を使用します。

この工具を使うことによって各気筒の圧縮圧力を計ることが出来ます。エンジンのチューニングなどを行う場合には必須の工具です。DIYの工具としては本格的にエンジンの出力アップなどの整備をする方以外はあまり必要のない工具かもしれません。

コンプレッションゲージの使い方

コンプレッションゲージの使い方を説明します。圧縮圧力を計測するには協力者が必要です。

1.全気筒の点火プラグを外します。

2.全気筒のインジェクタのコネクタを外します。これを行うことで燃料の噴射を停止させます。

3.コンプレッションゲージにエンジンにあうアタッチメントを装着し、バルブ取り付け穴に挿入ししっかりと上から抑えます。

コンプレッションゲージ

ゲージの奥に見えるのがプラグ穴に挿入するアタッチメントです。

4.協力者にアクセル全開の状態でクランキングを行ってもらいます。数秒行ってゲージが落ち着いたらゲージ圧を読みます。

5.1気筒につき10回くらい計測します。一回計測するごとにゲージの圧力を抜いてください。

基準値はエンジンによっても異なりますが、13kg/cm2~14kg/cm2くらいです。

限度値もあります。エンジンによって違いますが、10kg/cm2以下くらいになると何かしらの異常があるといえます。

そのほかに、各気筒の圧縮圧力のばらつき具合でもエンジンの調子を確認できます。各気筒ごとに極端なばらつきがある場合は何かしらの不具合があるといえます。

今回のエンジンの圧縮圧力について

今回のエンジンの圧縮圧力はコンプレッションゲージで計測したところ、すべての気筒で0の状態でした。

プラグを外した状態のクランキング音と変わらない状態です。通常プラグを外すと圧縮が無くなるので音が変わります。

プラグ穴からエンジンオイルを垂らすことで、ピストンとシリンダーの密封がよくなり圧縮が上がることがあります。この場合ピストンやシリンダーに不具合があると推定できます。

今回も念のためオイルを垂らして確認しましたが変わらずです。なのでシリンダーよりも上の部分動機弁系に異常があると推定できます。

圧縮不良の原因探求 動機弁系の点検

これまでの点検で動機弁系に不具合がありそうだということが分かったので、その箇所に関して点検を行っていきます。

先ずはタイミングチェーンの状態を確認したかったのでヘッドカバーをあけてみることにしました。

シリンダーヘッド

ヘッドカバーを取り外した状態です。

左側に見えるのがタイミングチェーンです。

この状態でクランクシャフトを回し、第一気筒を圧縮上死点にします。ちなみにうえの写真は第一気筒圧縮上死点の状態です。ベルトに近い方から第一気筒、第二気筒・・・となり、インテーク側のカムが上を向いている状態が圧縮上死点です。この状態でバルブクリアランスを計測す事が出来ます。

するとバルブクリアランスが過大になっていることがわかりました。それも全気筒で。

バルブクリアランス

画像だと少しわかりにくいですが赤丸部分に目に見えるほどの隙間があります。

ここの隙間は正常であれば1mmもないので隙間が見える時点で明らかに異常です。

このことから、全気筒でインテークバルブが閉じない状態になっているということがわかりました。

閉じない原因としてはバルブタイミングのコマ飛びでピストンとバルブが干渉してしまい、バルブステムが曲がってしまったものと思われます。

エンストした時に聞こえたガツンという音はピストンとバルブが当たった時の音だったのだと思います。

バルブステムの曲がり

この画像を見るとバルブステムが曲がってしまっているのがわかるかと思います。

この画像は今回のエンジンのバルブではありませんが、恐らくこのような状態になっていると思います。これではステムガイドに引っかかり閉じることはできなくなります。

話を聞くと前々からエンジンからガラガラという音が出ていたそうなので、タイミングチェーンの伸びや、チェーンテンショナの不良などがあったものと思います。

エンジン圧縮不良による始動不良 まとめ

普通に乗っている分には今回のようなバルブタイミングのコマ飛びが起きることはないです。

オイルのメンテナンスなどが悪かったのがひとつの原因だと思いますが今回そこまでの原因究明は行いませんでした。

今回の圧縮不良の修理にかかる費用はかなり高額になります。少なくともシリンダーヘッドのオーバーホールが必要になりますから、費用は何十万円の世界だと思います。今回は修理は行わないことになりました。

圧縮不良が起きたエンジンは寿命がきたと思ってください。

日頃のオイル交換の重要性を思い知らされた案件でした。

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