自動車のクラッチの仕組み構造 わかりやすく解説
自動車のクラッチの仕組み、構造を理解することでクラッチに対してのDIY整備や不具合などの対応ができるようになります。
この記事では自動車のクラッチの仕組みや構造をなるべくわかりやすく解説していきます。
基本中の基本をまとめたものですので、知っている方には少し物足りないかもしれませんが、基本の振り返りと思って読んでいただければ幸いです。
また別の記事ではクラッチの不具合、交換時期、交換費用などをまとめていますので、そちらも読んでいただけると、よりクラッチの理解が深まると思います。
このページの目次
クラッチとは
クラッチとは「エンジンの負荷を必要に応じて断続する」装置です。
日本語にすると動力断続装置ともいいます。
必要に応じてとは・・・
- 発進時=徐々に動力を伝達する
- 始動・変速時=動力をトランスミッションに伝えない
- 走行時=動力をトランスミッションに確実に伝える
下手なイラストですみません・・・
動力の 伝達順序・・・フライホイール(エンジン)→クラッチディスク→インプットシャフト→トランスミッション
クラッチの種類
・摩擦クラッチ
摩擦クラッチはさらに乾式と湿式のものに分類されます。
乾式クラッチは単板のものと複板があり、ダイヤフラムスプリング式とコイルスプリング式のものがあります。
湿式クラッチは多板のものが用いられています。
・湿式と乾式の違い・・・冷却方法が異なる。自動車には一般的に乾式のものが多く用いられています。
・多板にする理由とは・・・クラッチは摩擦力によって動力を伝達する。摩擦面積が大きいほど摩擦力も大きくなり、より大きな動力を伝達できるようになる。摩擦している部分を増やす(摩擦板の枚数を増やす)事でも同様の効果が得られるため。
☆摩擦クラッチはスプリングを用いて円板状の摩擦板をフライホイールに押し付け、その摩擦力によって動力を伝達する。
自動車ではダイヤフラムスプリング式クラッチが主に使われている。
・流体クラッチ
オートトマチックトランスミッションに用いられる。「フルードカップリング」「トルクコンバータ」
トルクコンバータは、入力側のトルクより、出力側のトルクを増大できる。
・電気クラッチ
ドライブ(エンジン側)とドリブン(ミッション側)の間に鉄粉、ドライブ側がコイルになっており電流を流して電磁石とし、鉄粉を介して伝達を行う。
ダイヤフラムスプリング式クラッチの構成部品
・クラッチカバー=異物の混入を防ぐ。ダイヤフラムスプリングとセットになっていることが多い。
・ダイヤフラムスプリング=プレッシャプレートを介し、クラッチディスクをフライホイールに押し付ける。
・ピボットリング=クラッチ切断時、ダイヤフラムスプリングの支点となり反り返させる。
・プレッシャプレート=クラッチディスクをより強く押さえつける
うえの4つの部品はこの画像の様にクラッチカバーと一体になっていることが多いです。
- クラッチディスク=摩擦力によりエンジン動力をトランスミッションに伝える。クラッチフェーシング(摩擦材)ダンパスプリング(接続時の衝撃吸収)で構成される。
- レリーズベアリング=クラッチペダルからの力をクラッチ本体に伝える。切断時操作。アンギュラベアリングが用いられる。
画像はレリーズベアリングです。
クラッチ交換の際は同時に交換することが多いです。この部品に不具合が起きるとクラッチを切ったときに異音が発生する原因になります。
クラッチの作動
接続時・・・ダイヤフラムスプリングがプレッシャプレートを介してクラッチディスクをフライホイールに押し付けている。
遮断時・・・クラッチペダルからの操作でレリーズベアリングが動き、ダイヤフラムスプリングを押す。ピボットリングが支点となりダイヤフラムスプリングが反り返りプレッシャプレートが解放され、クラッチディスクがフライホイールから離れる。
・ダイヤフラムスプリングの利点
- 構造が簡単である(部品点数が少ない)
- プレッシャプレートに働くばね力が均一である
- 高速回転時遠心力によるスプリングの変形が少ない
- クラッチを切ったとき保持力が軽い
クラッチ操作機構
クラッチの操作機構とは、クラッチペダルを操作してからクラッチ本体(レリーズフォーク、レリーズベアリング)を動かすまで。
・機械式・・・ケーブルやワイヤーを使ってレリーズフォークを動かす。機構や動作が簡単。ペダル操作が重くなる。一般に1500cc以下の車に用いられる。
・油圧式・・・油圧によってレリーズフォークを作動させる。ペダル操作が軽い。(パスカルの原理)作動が確実。部品点数が多い。保守整備が必要。マスタシリンダ(ペダルにより油圧を発生)レリーズベアリング(油圧を受けレリーズフォークを作動させる)
- 調整式・・・クラッチディスクの摩耗により、遊び量が変化する。プッシュロットの長さを変え、遊び量を調整する。
- 無調整式・・・クラッチディスクが摩耗しても、自動的に調整するため遊び量は変化しない。(レリーズベアリングがダイヤフラムスプリングに常に接触)
・クラッチの遊びとは・・・ペダルを踏み始めてから、レリーズベアリングがダイヤフラムスプリングに当たるまでの量。
自動車のクラッチの仕組み構造まとめ
AT車が主流の現代ではクラッチの整備などをする機会も減ってきましたが、車好きの方々にはまだまだ根強い人気があるのがマニュアル車です。
マニュアル車はエンジンとミッションがクラッチを伝って機械的ににつながっているため運転した時のダイレクト感や燃費などが大きく変化します。
最近ではそういって面が見直されAT車に乾式クラッチを用いたミッションの技術も自動車に用いられるようになってきています。
~合わせて読みたい記事~